まず結論は?
2026年10月時点で、値上がりはまだ止まっていません。ただし「上がる速さ」は2026年前半をピークに鈍ってきています。 台湾の市場調査会社TrendForce(トレンドフォース。メモリ価格調査で最も引用される会社)は、2026年第4四半期もDRAM(メインメモリ用チップ)の契約価格が前四半期比10〜15%、NAND(SSD用チップ)は15〜20%上がると予測。「2027年もサーバー需要は堅調」「新工場の立ち上がりは2027年後半以降」とも見ており、少なくとも2027年前半までは新品メモリ・SSDが安くなる根拠は見当たりません。
なぜ2025年秋から急に値上がりしたのか?
原因は「AIサーバー向け需要が急増し、メモリメーカーが生産能力をそちらに振り向けた」ことです。TrendForceの説明は次のとおりです。
- 先端ラインがHBMとサーバー向けに回された。 HBM(AI用GPUに載る積層メモリ)や大容量RDIMM(サーバー用メモリ)は利益率が高く、メーカーが優先。パソコン・スマホ・一般向けDRAMが品薄になりました(2025年9月24日)。
- DDR4の生産終了(EOL)が重なった。 大手がDDR4から撤退する中で顧客が買い急ぎ、2025年7月に一般向けDDR4の契約価格が1か月で60〜85%上昇。8GB DDR4モジュールが同容量のDDR5より高くなる逆転も起きました(2025年8月11日)。
- NANDも構造的な不足に。 AIのデータ保存需要とハードディスク不足が重なり、「NAND不足は構造的で2026年を通じて続く」と2025年11月に表明。
- 工場はすぐ増えない。 2026年の設備投資は増えるが多くはHBMやプロセス更新に使われ、「2026年の生産量への寄与はごくわずか」とされています。
価格は実際にどれだけ上がったのか?
TrendForceが公開した数字を時系列で並べます(契約価格は「メーカーと大口顧客が決める卸値」、前四半期比)。
| 時期 | 一般向けDRAM | NAND Flash |
|---|---|---|
| 2025年Q4 | +8〜13%(予測) | +5〜10%(予測) |
| 2026年Q1 | +93〜98%(実績) | — |
| 2026年Q2 | +58〜63%(予測) | +70〜75%(予測) |
| 2026年Q3 | +13〜18%(予測) | +10〜15%(予測) |
| 2026年Q4 | +10〜15%(予測) | +15〜20%(予測) |
スポット価格(その場で1回だけ取引する値段)はさらに激しく、DDR4 8Gbチップ(1Gx8、3200MT/s)の平均スポット価格は2025年6月11日の約2.96ドルから12月30日の約23.75ドルへ、半年で約8倍。NANDの512Gb TLCウエハーも約2.71ドルから約13.06ドルへ上がりました。
日本の店頭にも波及し、AKIBA PC Hotline!の2026年10月15日調査では、DDR5-5600 64GB×2枚組の最安値が約39万9,700円(前回比33%上昇)、DDR4-3200 32GB×2枚組は約8万4,980円(31%上昇)でした。
いまの相場はどうなっている?(セミコンチャートのデータ)
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過去からの推移はどうなっている?(セミコンチャートのデータ)
グラフと表は同じデータです。グラフだけでなく数字でも確認できるように、必ず両方を置いています。値が無い日は空白のまま表示し、補完はしていません。
「上昇率が縮んだ」は「安くなる」という意味ではない?
違います。 上昇率はQ1の「+93〜98%」からQ3の「+13〜18%」へ縮みましたが、「前の四半期よりさらに13〜18%高い」という意味で、価格は上がり続けています。TrendForceは2026年7月、鈍化の理由を「買い手がこれ以上の値上げを受け入れにくくなったため」とし、「不足そのものは解消していない」と明記しています。
いつまで続くのか、根拠は何か?
TrendForceの公開資料から読める根拠は4つです。
- 供給増は2027年後半以降。 企業向けSSDの「大規模な新規生産能力は2027年末〜2028年まで到着しない」(2026年3月31日)。Micronの新工場も「早くても2027年」。
- サーバー需要は2027年も堅調。 「サーバー出荷は2027年まで堅調」(2026年7月)、PCメーカーも「2027年もDRAM供給は厳しい」と見て買い急いでいる(2026年9月末)。
- 長期契約で新規供給が先に押さえられている。 企業向けSSDの新規供給は「大半が事前契約済みで市場にほとんど出てこない」(2026年9月30日)。
- 消費者向けは後回し。 サーバー向け優先が続き、パソコン・スマホ向けの割り当ては2027年も減る可能性が指摘されています。
中古・流通在庫の相場にはどう影響するか?
新品の品薄は中古メモリ・SSDの需要を押し上げます。特にDDR4は新品供給が細る一方、DDR4対応機が大量に稼働しているため、延命需要が中古に集まります。TrendForceは「2026年にDDR4供給が急減し、1Gbあたり単価が最も高くなる」と見ています(2025年12月31日)。業者は、DDR4在庫(特に大容量・ECC・RDIMM)の価値が高まる局面である一方、新品が正常化する2027年後半以降に反落するリスクも見ておく必要があります。
FAQ
Q1. 今メモリを買うべき?待つべき? TrendForceの予測では2026年Q4も値上がりが続き、供給が増えるのは2027年後半以降です。「待てば安くなる」根拠は現時点ではありません。必要な分だけ、代替品(前世代・中古)も含めて早めに確保するのが現実的です。
Q2. なぜAIが原因で、普通のパソコンのメモリが高くなるの? メモリの工場は限られていて、AIサーバー向け(HBM、大容量RDIMM)のほうが利益が大きいため、メーカーがそちらを優先し、パソコン向けの生産が減ったからです。
Q3. DDR4とDDR5、どちらがより上がった? チップ単価では、2025年にDDR4が急騰してDDR5と同等〜逆転しました。ただし日本の店頭価格では、2026年10月時点でも同容量ならDDR4キットのほうが安い状態です。詳しくは記事「DDR4とDDR5、延命ならどちらを選ぶ?」を参照してください。
Q4. SSDも同じように高くなる? はい。NANDは2026年Q2に契約価格が70〜75%上昇し、Q4も15〜20%上がる予測です。特に企業向けSSDは「最も値上がりが速い品目」とされています。
Q5. 「不足は構造的」とはどういう意味? 一時的な需要の波ではなく、工場の生産能力そのものが足りない状態を指します。新しい工場ができるまで解消しない、という意味です。
出典
- TrendForce「DRAM Contract Prices Expected to Rise 8–13% in 4Q25...」(2025年9月24日) https://www.trendforce.com/presscenter/news/20250924-12733.html
- TrendForce「DDR4 and LPDDR4 Supply Tightens Sharply in 2H25...」(2025年8月11日) https://www.trendforce.com/presscenter/news/20250811-12667.html
- TrendForce「Memory Spot Price Update: DDR4 and DDR5 Chips Hit Price Parity in Early June」(2025年6月11日) https://www.trendforce.com/news/2025/06/11/insights-memory-spot-price-update-ddr4-and-ddr5-chips-hit-price-parity-in-early-june-amid-soaring-hikes/
- TrendForce「Memory Spot Price Update: DDR4 Spot Prices Climb as Samsung Holds EOL Line」(2025年12月31日) https://www.trendforce.com/news/2025/12/31/insights-memory-spot-price-update-ddr4-spot-prices-climb-as-samsung-holds-eol-line/
- TechNews(TrendForce調査引用)「2026年メモリ業界の設備投資と供給見通し」(2025年11月13日) https://finance.technews.tw/2025/11/13/2026-memory-industry/
- TechNews(TrendForce調査引用)「AIサーバー需要が2Q26のメモリ契約価格上昇を牽引」(2026年3月31日) https://technews.tw/2026/03/31/ai-server-demand-drives-2q26-memory-contract-price-increase-csps-lock-supply-long-term-deals/
- TrendForce「Rapid Contract Price Surge Drives 1Q26 DRAM Industry Revenue Up 81% QoQ」(2026年6月1日) https://www.trendforce.com/presscenter/news/20260601-13070.html
- igor'sLAB(TrendForce 3Q26見通し引用)(2026年7月8日) https://www.igorslab.de/en/dram-and-nand-remain-more-expensive-trendforce-sees-slowing-but-still-rising-memory-prices-q3-2026/
- TechNews(TrendForce 4Q26見通し引用)「AI伺服器新增需求支撐4Q26記憶體合約價漲勢」(2026年9月30日) https://technews.tw/?p=1622115
- AKIBA PC Hotline!「DDR5メモリの値上がりが目立つ、64GB×2枚組は約40万円に急騰[10月前半のメモリ価格]」(2026年10月15日) https://akiba-pc.watch.impress.co.jp/docs/price/monthly_repo/2148207.html