まず結論は?
海外の部品は、本体価格だけで比べると判断を誤ります。 買うときは「送料・関税・輸入時の消費税・為替」を足した総額で、国内の新品・中古と比べます。コンピューターの部品や半導体の多くは、国際的な取り決めで関税が無くなっていますが、輸入時の消費税はかかります。売るときは、輸出の証明書類をそろえれば消費税が免除される一方、相手の国や使い道によっては外為法(日本の輸出管理の法律)の許可が必要になります。また、制度は変わり続けています。日本は2028年4月から少額輸入の扱いを変え、米国は2025年8月に少額輸入の免税をやめました。
海外から買うとき、何にお金がかかる?
- 本体価格:海外の出品はドル建てが多く、円に直すと為替で変わります。
- 送料:日本までの国際送料です。出品ページで「日本への送料」を必ず確認します。
- 関税:コンピューターや半導体などのIT製品は、WTO(世界貿易機関)の情報技術協定(ITA)で関税が撤廃されています。ITAは1996年12月に合意され、2000年までに段階的に関税をなくしました。2015年には対象品目が201品目広がり、日本は交渉を主導した国の1つです。品目ごとの税率は税関で確認してください。
- 輸入時の消費税:関税が無くても、輸入した品物には消費税がかかります。
1万円以下なら税金はかからない?
今はかかりません。ただし見直しが決まっています。
- 今のルール:税関によると、課税価格(税金を計算するもとになる値段)の合計が1万円以下なら、関税と消費税が免除されます。1つの申告ごと、郵便なら1つの包みごとに判断し、同じ相手から同じ時期に分けて送られたものは合計されます。
- 個人使用の特例の廃止:個人で使う品物は、海外の小売価格の6割を課税価格とする特例がありました。令和8年度の税制改正大綱で、この特例を廃止すると決まりました。財務省の説明では、特例を使った品物の9割以上が1万円以下で、越境EC(海外の通販サイトでの買い物)で広く使われていたとされます。
- 2028年4月からの見直し:税理士法人の解説によると、令和10年(2028年)4月1日から、1万円以下の品物も消費税の対象になります。買う人が輸入時に払うのではなく、売る側(一定規模以上の通販サイトの運営者を含む)が国内の取引と同じように納めます。
海外へ売るとき、消費税はどうなる?
国税庁によると、輸出は日本国内で消費されないため消費税が免除されます。ただし輸出したことの証明が必要です。
- 税関の輸出許可書、または郵便の場合は20万円以下なら郵便局の引受証明と発送伝票の控えなどを、7年間保存します。
- 2026年10月1日以後は、代金を現金や取引相手以外から受け取る場合、相手国の輸入許可書など輸入の事実を示す書類の保存も必要になりました。
輸出が禁止・許可制になる部品はある?
あります。経済産業省によると、日本は外為法にもとづき、軍事に転用できる品物の輸出を管理しています。
- リスト規制:性能などで決められた品目は、許可が必要です。
- キャッチオール規制:リストに無い品物でも、大量破壊兵器などの開発に使われるおそれがあれば許可が必要です。集積回路(半導体チップ)は、とくに注意する「特定品目」に入っています。米国や韓国など一部の国向けには、この確認は適用されません。
高性能なGPUには米国の輸出規制がかかる型番もあります。売る前に、型番ごとに「該非判定」(規制の対象かどうかの確認)をしてください。
米国に売るときの注意は?
米国は2025年8月29日、800ドル以下の荷物の関税免除(デミニミス)を、すべての国からの荷物について停止しました。郵便で送る荷物にも関税がかかります。米国の買い手にとっての総額が上がるため、送る方法と、誰が関税を払うかを事前に決めておきます。
いまの相場は?(セミコンチャートのデータ)
海外の中古相場(米国、ドル建てを円に換算)と、国内の新品・中古を並べます。送料・関税・消費税は含まないので、上の項目を足して比べてください。
過去からの推移は?(セミコンチャートのデータ)
判断の手順は?
- 本体価格を円に直し、送料と輸入時の消費税を足す。
- 国内の「送料込み最安」と「中古代表価格」と比べる。
- 届くまでの日数と、初期不良のときの返品の手間も考える。
- 売るときは、該非判定と輸出の証明書類を先に用意する。
FAQ
Q1. 海外のGPUは関税がかかる? コンピューター部品や半導体の多くはITAで関税が撤廃されていますが、品目の分類によって違うことがあります。輸入時の消費税はかかります。確かな税率は税関の事前教示(輸入前に税率を問い合わせる制度)で確認できます。
Q2. 1万円以下に分けて送ってもらえば免税になる? なりません。同じ相手から同じ時期に分けて送られた郵便物は、合計して判断されます。
Q3. 中古GPUを海外に売るのに許可は要る? 型番・相手の国・使い道によって必要になることがあります。たとえばNVIDIAは、RTX 4090が米国の輸出規制(2023年10月の規則)の対象になると米国の証券当局への届出で示しています。売る前に該非判定をしてください。
Q4. 輸出で消費税が免除されるには何が必要? 輸出許可書、または郵便の場合は引受証明と発送伝票の控えなどを7年間保存します。
Q5. 海外の相場が安いのに、国内で高いのはなぜ? 送料・消費税・為替・届くまでの時間・保証の差があるためです。上の表の国内と海外の差は、これらを含まない数字です。
出典
- 税関 カスタムスアンサー「少額輸入貨物に対する免税」 https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1006_jr.htm
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱(関税)」 https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_08.htm
- 財務省 広報誌「ファイナンス」2026年3月号(少額輸入貨物の課税価格特例の見直し) https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202603/202603d.html
- 税理士法人 令和8年度税制改正解説(消費税) https://www.ht-tax.or.jp/pdf/article/zeiseikaisei_2026/tsuji-hongo-zeiseikaisei2026-03-shohikazei.pdf
- WTO「Information Technology Agreement」概要 https://www.wto.org/English/res_e/focus_e/focus17_e.pdf
- 外務省「WTO情報技術協定(ITA)拡大交渉」(2015年7月27日) https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_002333.html
- 国税庁 タックスアンサー No.6551「輸出取引の免税」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6551.htm
- 経済産業省「安全保障貿易管理の概要」 https://www.meti.go.jp/policy/anpo/gaiyou.html
- 経済産業省「キャッチオール規制」 https://www.meti.go.jp/policy/anpo/catchall.html
- HotHardware(NVIDIAの米国証券取引委員会への届出、RTX 4090の輸出規制) https://hothardware.com/news/nvidia-sec-filing-semiconductor-restrictions
- KPMG「US CBP implements EO suspending duty-free de minimis treatment」(2025年8月) https://kpmg.com/us/en/taxnewsflash/news/2025/08/us-cbp-implements-eo-suspending-duty-free-de-minimis-treatment.html
- ネットショップ担当者フォーラム 越境ECの少額輸入貨物の見直し要望に関する記事(2025年9月11日) https://netshop.impress.co.jp/node/14772